グローバル化と資本主義の矛盾

Noro153+EN2011-09-15


世界状況を知れば知るほど矛盾だらけで、一体世界はどこへ向かっているのだろうという疑問が湧いてくる.今日はその矛盾の一つ「食・動物と海の生物」の話.

一生懸命真面目に働くことの理由はより良い生活(より幸せになるため)のためのはずが、何だかおかしなことになっている.それは日本だけではなく、それぞれ別の問題かもしれないが、世界中の危機問題の根幹にあることは多分共通しているのではないか、と感じている.

最近日本では放射線汚染が問題になり、産地偽装など当たり前のようで、一体何が安全なのか全く解らない.原発事故以前の去年と一昨年の「食品偽装」のリストを観ても、年間100件以上の偽装が摘発されている.10年前ぐらいの雪印が「賞味期限切れの牛乳を回収し、新たな賞味期限を明記、パッキングし直し出荷していた事件.イトーヨーカドー不二家、JAコープ、日本水産日本ハム日本製粉、ホテル、大手チェーン居酒屋など、大中小を問わず企業がインチキをしている.

中国では、レストランの排水溝などから集めた油を精製して、新たな「食用油」として売っていた大きな犯罪組織を摘発したというニュースがあった.

ベルギーやフランスのように「食文化」が社会の重要な位置をしめ、料理人という職人は最高の食材から最高の食を作ることが自慢だった国でも「料理人の手間を省き、時間を節約する」という名目で、レストラン専門の加工品(完成品)を出す大きな企業が幅を利かせてきているそうだ.割と高級そうなレストランまでそういう企業が大量生産した完成品を「フレッシュな食材から手作りしている」とウソを言って出しているというドキュメンタリーを見た.そうすると、卸の企業は「利益が優先」するので、原材料を安く仕入れ、長持ちさせるために様々な化学調味料を使う.例えば高級食材のトリュフという茸.フランス産は量も限られ値段も高いが質は良い.中国産は値段が20分の一.この中国産を料理し、化学合成された風味をスプレイしたら、全くフランス産と同じになるそうだ.そのような「食品の香水」が何十種類も存在し、それだけを専門に扱っている会社もある.

欧州の食品基準はとても厳しく、製造業の偽装という話はほとんど聞いたことはないが、飲食店のインチキは時々耳にする.

偽装食材ではないにしても「肉」を食べることは、地球の環境にとっては最悪だ.肉とその関連産業は、全世界の温室効果ガス排出量の51%にのぼるそうだ.国連の調査では、肉産業は全世界の運輸や交通機関、すべての飛行機、鉄道、船、車やバスなどの総計よりも多く温室効果ガスを排出している.その他、水質汚染、エネルギー問題、森林伐採などの深刻な環境問題を引き起こしている.(数年前にポール・マッカートニーが「環境のために週に一日は肉食を止めよう」と言ったのはこれが理由だ)

そして、鶏、豚、牛などの家畜は「利益を最大限に上げる」ための商品だ.そのためどんな規制があろうが、残酷な扱いは「効率がよい」となってしまう.鶏は狭い場所に沢山押し込まれるため、戦ってもお互いが傷つけ合わないように、(右上の写真)ヒヨコの時にクチバシを麻酔なしに熱で焼かれる(カットされる).できるだけ早く「商品」として出荷する為に、ホルモン剤抗生物質などで成長を促進し、普通の成長期間の三分の一程度で出荷される.豚や牛に関しては、ホルモンや成長剤、抗生物質はもちろん、更に残虐な扱いを受けているが、ここでは省略.欧米の動物愛護団体などが、隠しカメラで撮った証拠ビデオはユーチューブに沢山アップされている.


中国の高級食材である「フカヒレ」はここ数年全世界で問題になっている.巨額が絡んでいるので、当然マフィアや暴力団がその産業の中心にいるのは、麻薬の流通に似ている.各国の政府や官僚が買収され、密猟が蔓延りサメを絶滅の危機にまで追いやっている.アフリカではヒレを取る為のサメ釣りに生きた犬ネコが使われている.この残虐性を肯定できる人はいないはず・・?この写真はたまたま助けられた犬.

同様に高額で売買される「マグロ」も世界の海から消えようとしているのはご存知だろうか?日本が高額で買うので、やはり密漁が非常に問題になっている.地中海では欧州の手が届かなかったリビヤ、そして世界中の密漁者たちがマグロを獲り日本へ売る.三菱を中心にしたマグロ産業としては、数が少なくなり値がつり上がるほど利益が上がり、良い商売ができるわけだ.三菱はそのマグロを冷凍貯蔵しておく巨大倉庫を世界各地に確保している・・・

密猟といえば、アフリカのサイと象アジアの虎ヒョウなども超高額で売買されるため、この数年密猟は増える一方だ.アフリカの沿岸では、先進国のハイテク漁船が底引き網という(環境にとって)最悪の方法で海の生物を根こそぎ獲ってしまうので、地元の昔ながらの漁師は自分の家族を食べさすこともできず、漁を止め内陸での密猟へ走ってしまう.そして猿等の小動物を密猟することが生きる為の普通のこと、となってしまっている.

6月にイタリアのフィレンツェへ行って、一つとても驚いたことがある.フィレンツェの一番有名な橋には、100軒はあるだろうと思われる沢山の宝石店が並んでいる.昔からこの橋は宝石店の橋だが、その半分近くが全世界で獲ってはいけない珊瑚を扱っていた.しかも最高級とされる真っ赤な珊瑚のネックレスや指輪などがごろごろとある.沖縄を含めた世界中の珊瑚礁が絶滅の危機になっているのに・・・

利益追求の競争社会は、壁に突き当たっているのはみなが気がついている.貨幣資本主義というシステムは「汚職などの腐敗なし」には成り立たない.上記の日本の食品偽装で摘発された社長達は、こぞって「競争相手に勝とうと思ってつい・・」「利益追求の為に・・」偽装したという.

ベルギー、アイルランドルクセンブルグそしてニュージーラン以外の(日本を含めた)先進国の大きい銀行は未だに禁止されている対人地雷を作る武器製造業に投資をしている.だからこれを読んでくれたあなたが銀行に預けてあるお金の一部が武器製造業への投資として使われている.日本でも人気ブランドの「ZARA、ナイキ、ポロ」などは、後進国で安い賃金で子供を働かせたり、従業員を奴隷同様に扱っていることが摘発された.人気チェーンのスターバックスは、イスラエルに資金提供をしてパレスティナ人を殺しているとしボイコットの対象になり、フェイスブックでも数千人が参加しているグループがある.

さて、こんな状況で更なる経済成長を望むことができるのだろうか?それとも人類絶滅まであと100年という説が正しいのか・・・