ヨーロビジョン、欧州国別歌合戦2014

今年のヨーロビジョン、欧州国対抗歌合戦は、昨年の優勝国、デンマークで開催された.2014年の優勝国はオーストリアだったので、来年2015年の記念すべき第60回ヨーロビジョンはオーストリアで開催される.

59年前、戦争で荒廃した欧州に楽しいイベントを創ろうと「欧州放送局連合」がテレビ番組として創設した.

今年のヨーロビジョンの優勝国オーストリアの代表は、25歳の口ひげの(男性)美女で、開催前から話題になり、5月10日の決勝開催直後には、ロシア副首相が激怒しツィッターを通し「怒り」を表明したり、ホモフォビア(ホモ嫌い)たちからの凄まじいヘイトの書き込みが殺到したり・・・

ロシアの副首相、Dmitri Rogozine氏は(口ひげ美女の優勝について)「非常に失望、遺憾である.欧州に対しての激怒には上限がない.これは欧州の崩壊を意味する.50年前にロシアは、それまでオーストリアに進駐していたが解放した.これは間違いだった.進駐していればこんなことにはなっていない・・・」とまで発言し、決勝翌日11日には、各国主要メディアがそれを伝えた.
ベルギー・La libre Belgique : http://www.lalibre.be/culture/politique/la-russie-se-souleve-apres-la-victoire-du-travesti-autrichien-a-l-eurovision-536f653e35704f05d6908cb7

ヨーロビジョンは各国一人の代表者を送り込むために、自国でのコンクールなどで事前に選ぶ.オーストリアは昨年の国内歌唱コンクールで優勝し、今年のヨーロビジョンへその代表、口ひげの美女を送るかどうかも意見が2分されたという.国内での人気、人柄、そして何より「オーストリアが性的少数派にどれだけ寛容か、人権や自由や平等精神を推奨しているイメージ」を見せる絶好のチャンスとして、決定されたという.国内のコンクールで優勝した直後から幾つかのテレビ広告、例えば、電気会社のエコ節電広告などにも出演しているので、口ひげ美女の人気が伺える.

私もヨーロビジョンはベルギー人応援のために準決勝を観たが、残念ながら決勝進出とはならなかった.

今年のヨーロビジョンは、参加国(今年は39カ国)全域に生放送され、各国で選ばれた専門審査員3名づつ、とパソコンや携帯電話GSMで一般の人々が投票できる仕組みになっている.勿論自国代表者へは投票できない.各国審査員の採点はすべて公開されている.

国際スポーツ競技などと同様に「一切、政治や宗教や人種差別などは御法度」となっているが、採点を観ると「あやしい」感じも否めない.元ソ連圏はそれぞれ「仲間国や親元」を優遇したり、今回の採点も「宗教が強い国」は優勝者、口ひげ美女には零点だったり・・・噂では、多くの参加国はヨーロビジョンを「外交」に利用したり・・・

何はともあれ、今回の優勝者は、歌唱力/表現力ともに最高得点、しかも断トツ1位に相応しい、私自身も歌唱力や表現力に加え、別ビデオでのインタビューなどに感動した.13カ国が持ち点の最高点12点を彼女に与え、10カ国ほどが次点10点を与えている.これは欧州の自由と人権思想が本物であることをまた一つ示してくれた.人を人種や色や出身地や姿形などで差別や判断はしない.

優勝したコンチータという芸名の口ひげ美女は、優勝の感動を「この優勝は、自由と平和を望む全ての人々のものです.私たちは「ひとつに繋がっている」そのためにこれからも闘います」という挨拶をした.

Conchita Wurst Final : Eurovision 2014

オーストリア国内の歌唱コンクール、初めて見る人はびっくりするが、歌が始まると次第にコンチータに引き込まれ感動、最後にはスタンディングオベーション・・・
Conchita Wurst Austrian Final 2011

ヨーロビジョン・オフィシャルサイト:http://www.eurovision.tv/page/news?id=austria_wins_2014_eurovision_song_contest

追記:ベルギーでは、すでに数年前から、用紙などに書き込む男女別の他に第3の性を付け加えることや一切の性別表示を無くすことなどが、検討されている.生まれ持った性でどちらにも当てはまらない(どちらにも当てはまる)場合が多々あるという事実.

追記5月13日:コンチータの優勝で様々な評価がネットや新聞記事になっているので、ここに書き留めておくと(ご多分にもれず私もすっかりコンチータのファンになってしまったので):音楽評論家の批評はフランス、ベルギー、英国、オランダなどでは「最高の評価」であること.彼(女)は、世界の舞台に立つシンガーになることは勿論これから目指すことであるが、それ以上に歌を通して訴えたいことは「人権であり、差別のない世界を創ること」、だれでも自分を偽らずに自由に生きる権利があること.人種、肌の色、出身地、着るもの、姿形、男女差別、性的指向などで人を判断することは、人権問題であり、過去のこと.他人に迷惑をかけないのに、なぜ本当に自分の好きな格好で生活できないのか・・.と言う訳で、敢えて「口ひげ美女」というパーソナリティを作り上げ、それで歌うことにしたという.だから「性転換を望んでいる訳でも、舞台の口ひげ美女が彼自身ではない」という.最近の世界の「ホモフォビア・ホモへのヘイト」を懸念している.歌だけ聴いても、みな彼(女)の虜になってしまうが、英語は母国語?と思われるほど堪能で、頭脳明晰で魅力的な話し振りでも彼(女)に恋をしてしまう、と某国放送局のインタビューワー.

以下は昨年11月アイルランドでのインタビューで: