日本の違法調査捕鯨について(4)

whaling

ハーグの国際司法裁判所の判決が、3月31日発表された.判決は予想通り、日本の完全敗訴.私が一番驚いているのは、日本の新聞記事各種に書かれる「予想に反しての敗訴」「驚きの完敗」「全く予想していなかった」などの見出しだ.私は、もし日本が勝訴することがあれば、それは日本側の裏工作が成功したという以外は考えられないと思っていた.(もちろん国際裁判所が威信を失う)

理由は、以前の「日本の違法調査捕鯨について(1〜3)」を読んで頂ければ解るように、調査捕鯨とは科学という偽装の元に行われていたインチキ調査捕鯨、官僚の天下り先確保でしかないこと.その日本の偽装調査捕鯨については、世界の多くのメディアが長年に渡り取り上げていた、にも関わらず「驚き」とは・・・

もう一つの驚きは、本日12日、政府が『「残念であり、深く失望しているが、判決に従う」とする答弁書を決定した。』と同時に、農水省(又は日本鯨類研究所)が「2015年度以降、南極海での調査捕鯨を再開する意向を示した。

これはもう、日本はだれがトップにいるのか、政府か官僚か.日本の建前と本音.国際社会をどう見ているのか、日本は非論理的、非倫理的な意地を貫き、孤立したいのか.これらを問う以外にない.

【世界の世論と反捕鯨の倫理的理由】
世界の世論は、反捕鯨だけではなく、同様に反野生動物狩り、反アシカ狩り、など等の方向へ行っていること.例えば、象牙のために、数百万頭もの野生の象が殺された.アフリカでは1970年代に次々に「象狩り」が禁止され、1980年代には「象牙の売買/輸出入禁止法成立」にも関わらず、現在でも年1万頭以上の象密猟が後を絶たない(見つけた場合、その場での処刑が法律としてある国々も).象牙は明らかに、日本が「鯨肉の伝統」とするより古くから利用されていた.アフリカの多くの民族が「食と生活の伝統」としていたのは、事実として誰でも想像できるが、現在では多分「象肉」の味を覚えているアフリカ人はそう多くはないはず.そして、象は象牙だけではなく、象肉や骨まですべて利用するからと言って、象狩りを肯定する世界の世論はないでしょう.

歴史では、自国の下層階級を「農奴という資源」として正当化していたが、欧州では17世紀には廃止された.次に「黒人や有色人を労働資源」として国際的に売買が正当化されていたが、18世紀から19世紀前半には「奴隷制度廃止法」が各国で成立している.

野生動物を「資源」としてつい最近まで乱獲していたのも事実だが、世界世論は、日本がクジラなどを「資源」として殺すことも同様に、21世紀の人類には相応しくないと大多数が思っている.同様にアシカやクマなどの野生動物を「資源」と見なすこと自体が、人類にとっての負の歴史であること.

負の歴史、野蛮であった過去を直視することで、(全ての人や動物、自然環境にとって)より良い世界への希望が持てるのではないか.

追記:多くの日本人が反捕鯨反日本と考えているが、これは完全に勘違いであることを認識しなければいけない.こういう勘違いが多いのは、日本の官僚とメディアが長年に渡り様々な「プロパガンダと洗脳」を続けた結果で、異論がなかった日本の捕鯨は、彼等にとってはいとも簡単な誘導であった.今回の国際裁判の判決から、捕鯨の賛否両論の議論が繰り広げられることは、日本にとっても世界にとっても良いこと.