欧州と日本の共通点は、どちらも芸術に通じる職人文化があった事だ.日本は戦争に負けた事が理由なのか、欧州よりはずっと速くその文化が消えようとしている.

最近、またブリュッセルの街並や建物の写真を人に見せたくて、別の写真ブログを再開した.ここの街並の何が美しいかと言うと、沢山の職人が腕にかけた見事な作品の集積だということが解った.もちろん優れた建築家がトップにはいるが.

ブリュッセルに限らず、ベルギーでは「建物の外側は公共のもの」という発想がある.全体的な「景色」というのも同じように、みんなで楽しむものなのだ.各地域の行政が、細々と素材、材質、ファサードを決める.同じ行政区でもこの通りはこうで、別の通りはこうで、とその時の政治で変わる場合もある.

ナポレオンの戦争、二つの世界大戦などで、沢山の建物が壊されたが、ブリュッセルの建物(住宅)で一番多いのが、1880〜1930年代に建てられた、アールヌヴォーとアールデコ.中心部の一番有名な観光地区は1500年代.そこにあるレストラン街(イロサクレ)は独立自治区だが、第二次大戦後ブリュッセル市の開発のやり方に大反対し、自分たちで街を守るために「独立運動」をした.そのクルマの入らない、数百の飲食店があるイロサクレの建物の規則はとても興味深い.500年前ぐらいのブリュッセルはスペイン領だったので、そのころの原材料はスペイン製が多い.で、もし、修理のために地面を掘り返して、出てきたレンガや石などの材料を使用しなければいけない.もしファサードを修理する時に、材料が見つからなければ、スペインで探す.そこまでして、「オリジナル」を守ろうとする.もちろん素晴らしい街並ができている.


その時の最高の材料とデザインとで、最高のモノを作るのは「職人」だ.職人文化とは結局、資本主義とは真っ向から対立するものだ、とつくづく感じる.ガラス職人が窓ガラスを作り、鉄職人がそれを守るたった一つの鉄格子を作る.それは1000年でも保つように作られている.

日本的感覚だと、建物やマンションを建てたり買ったり借りたりした人は、外も中もその人に権利があるとして、外もめちゃくちゃに扱う.何かというと、道路に面したベランダや庭に洗濯物を干したり、モノを置いたり、ほこりまみれでも掃除もしなかったり・・・.

資本主義の原理だとモノはすぐに壊れてくれないと経済が回らない.だから職人は無用の長物.それより工業化してすぐ壊れるモノを大量生産するほうが「儲かる」.というように、資本主義は全てのモノを商品化して利益を追求しようとする.だから、環境問題が出てくると、それで一儲けしようとしたり、動物の命や人間の内蔵まで商品になってしまう.日本で一番残念なのは、少し前まで沢山の人たちが持っていた「カネの為に何かやることは、下品だ」という感覚が全く消え失せてしまった事.

いつのころか、日本建築の大工さんがいなくなってしまったけど、非常に残念だと思う.大工さんだけではなく、あらゆる職人が消えようとしている.ベルギーも以前と比べると職人がすくなっているが、日本の方がなくなるスピードが早い.やはり、その第一の理由は、日本の方が「消費主義」に徹底しているからかもしれない.今日散歩にいったら、その地域でも一番古そうな建物の屋根を修理している職人さんたちに出くわした.50ぐらいのおじさんと若者たち数名.クレーンという現代の機械を使っても、後は昔ながらのやり方をしている.そうやって、技術が伝えられて行くし、モノを大事にすることを習う.

そうか、私が小さい頃「モノは大切にしなさい」ということをどんな大人でも言っていた・・・今はどうなんだろう?モノを大事に使う人は「ケチ臭い人」?