文化はある時期の文化が最高だからこれで止めてそれを「伝統文化」とする、と言ったことがあるだろうか?捕鯨とイルカ猟に賛成する人たちの多くは「日本伝統の文化」だからこれからも継承していく、と主張する.そして捕鯨やイルカ猟に反対すること自体が、反日であり、日本文化を守るために対抗しなければいけない、という意見をよく聞く.

Noro153+EN2011-12-11


もし、南北アメリカ大陸が現在でも黒人やアジア人を奴隷として、使っていたら容認できるか?(権力者にゴマをすって自分だけは権力者に優遇してもらう努力をするか?)もし、ニュージーランドの原住民が「伝統文化だから人肉を食する」ことを現在でもやっていたら?もし、南アフリカアパルトヘイトが現在でも続いていたら?もし、ローマ帝国の奴隷とライオンの闘いが「伝統文化」として続いていたら?カリブ海やアフリカのブードゥーや他の土着宗教の残虐性が「伝統文化」として許されていたら?キリスト教が中世にやっていた魔女狩りは正当化できるか?もし、上記のことが現在でも実行されていたら、確実に世界が非難し、経済制裁やボイコットをして止めるだろう.

人や動物の命と関係ない文化でも、もし今、北斎と同レベルの版画を作る人が居たら(沢山居るだろう)その人は「最高の芸術家」として尊敬対象になるか?モーツアルトと同レベルの作曲家が居たら(モーツアルト風に作曲できる人は沢山居る)その作曲家の音楽は「最高の音楽」として心に残るだろうか?もう少し遡って、ラスコー洞窟の壁画と同じような絵を同じような現場に描く人々が「凄いアーティスト」だと見られるか?素晴らしい芸術を創作した人々は、常にその時代の異端者だ.新しいことで人をびっくりさせたり、人に勇気や生きる喜びを与えたから現在でも素晴らしい芸術として人類が共有している.(「新しいこと」と言っても、そこに残虐性がある芸術は非難の対象になり、刑罰の対象にもなるが)

人はすべてアフリカ大陸から来ている.(それとも日本人だけは、現在の日本国内で最初の生命が生まれ、国内だけで進化してきたのだろうか?)

アフリカ大陸の人を先祖とする人類は、誕生以来世界各地へ移動していった、現在でも動いている.どこまで歴史を遡って、その時に日本国内に居た人々の子孫だけが「日本人」として認められるのか?

ビーグル号で世界を回ったダーウィンは突発的な想像で「進化論」を発表した訳ではない古代ギリシャの哲学者が「生命は海で発生し、後に陸に上がった」から始まり、古代ローマ文化や古代イスラム文化に引き継がれた.古代イスラムの哲学者は「蒸気から水、鉱物、植物、動物、そして類人猿から人へと進む生命の発展」の歴史を書いた.ダーウィンの祖父は「全ての温血動物は一つの生きた糸に由来する」とした.そしてダーウィンの「進化論」は宗教からの迫害にあいながらも、次々に立証され、現在では「人は猿から進化した」ことを信じない人は特殊な宗教原理主義者だけだと思う.キリスト教は白人以外の人々は「人間ではない、または白人の下にいて白人に仕えることを神が定めた」こととして人種差別が堂々と行なわれていたのは、それほど昔のことではない.

この進化論(白人、黒人、黄褐色人全ての人が共通の先祖を持っている)とともに「人種差別は間違っている」ことに気付いた人々の長年の努力で、現在は世界のほとんどの法律や憲法で人種差別が禁止されることになった.世界では人種差別を良いこと、自然のことと考える(まともな義務教育を受けた)人はまずいない.

そして時代は進み、現在では「人間だけが地球を我が物顔で支配すること、人間以外の動物を資源として扱うこと、人間以外の動物を人間が搾取すること」等に反対する「種差別反対」のムーブメントがとても大きくなってきている.人間生活(企業)の利益のために他の動物の生活の場(森林破壊や他の自然破壊)を破壊すること、殺して食糧にすること、殺して毛皮や皮として装飾品などにすること、動物実験という残虐行為をすること、趣味や遊びとして他の生き物に対しての残虐行為(闘牛、闘犬、狩猟、サーカス、競馬、競犬、イルカショー等)などに反対し、このムーブメントが大きくなり次々に法律や条例などで動物の権利が守られ始めている.

人種差別と種差別は時代が違うだけで内容は同じである.昔、奴隷としてアフリカの人々を捕まえていた奴隷産業は、現在自然の中にいるイルカやクマや猿などを捕まえカネ儲けのネタにすることと同じだ、という考えだ.

オーストラリアのタスマニアに移っていった白人は、地元にいた原住民を奴隷として使ったり、狩猟という遊びの対象として殺していたので、何万年もタスマニアで生活していた人々(数万人)は白人が来て数十年で「絶滅」させられてしまった(強いものの言い分「原住民のほとんどは病死」というのを覆せた証拠は、タスマニアに居た軍人たちの「今日は何人の原住民を狩りで射止めた」というようなノートが残っているので)オーストラリアやタスマニアで他にも沢山の動物が絶滅したが、これを正当化する人はいない.アメリカ・インディアンも同様の状況だったはずだ.勿論中南米インディオや他の原住民も滅ぼされ、絶滅した人種も少なからずいる.

日本はどういう訳か「弱肉強食」の思想が一般的になって、弱者を守るとかということより、自分が如何に勝ち組(強者)の中に居続けるかということが最優先となっている.だから例えば、ホームレスが行政や人々からどう扱われようが、気にする人もいない.しかし、いつか自分も弱者の仲間入りすることになるわけで、弱者になってから声を上げても権力側は聞く耳を持たない.原発事故の経過を見ているとつくづく「弱肉強食」思想が丸出しになっている.「放射能汚染の食物で死んでしまうなら、それも自然の法則だ.放射能汚染に生き残るDNAを持っている人々だけが進化の法則で生き延びれば良い」というように思える.この「弱肉強食」の思想はいつか自分にも回ってくるし、はっきり言うと「自滅思想」でもある.

地球という限られた環境で、我先にと自然破壊や(動物を含めた)弱者から搾取し、最大限の利益を上げることは、回り回って必ずだれにでも降り掛かってくる被害だ.だから地球の環境破壊、動物への虐待や種を絶滅させることは、人類の絶滅へと続く.放射能や他の産業廃棄物で汚染された水を飲んで、汚染された(又はGMOの食物)を食べて生き残っていくDNAを持った人々だけ生きていくことが自然の法則として日本で認められているのか?

日本独自の問題はすべて共通の腐った根っこを持っている.捕鯨問題、原発問題、イルカ猟、弱者や外人迫害やイジメ、暴力団容認、義理人情、自殺、改ざん、ねつ造、偽装、賄賂、悪徳経営、悪徳官僚、秘密主義、政治家や専門家の技量不足・・・・ さてこれらの問題の腐った根っことは、民主主義を守らせるべき国民の技量不足、知識不足、そしてナアナアでウヤムヤの社会を肯定することから来ている.(更に言うと、民主主義や世界でより良いとされる教育がなされていないこととマスメディアの情報隠蔽にある)世界でより良いとされる思想が教えられ、メディアがまともなジャーナリズム精神を持っていたら、日本は今のようにはなっていないだろうし、今回の原発事故被害ももっと少なくて済んだはずだ.

日本の社会が全域に渡り腐っていることが解ってきて、私は日本を脱出した(2010年6月).一生住むつもりでいたから、その準備には2年近く掛かっている.いつか何らかの被害者になり、そうなったらだれも(社会)助けてくれない、被害者や弱者は泣き寝入りか自殺以外に道はない、という日本社会に絶望したからだ.

そして相変わらず、全世界の世論の反対にも関わらず、この21世紀に野蛮な行為「捕鯨とイルカ猟」が税金を使い公の事業として行なわれている.先に述べた南アフリカアパルトヘイトという人種差別政策に対し、国連を中心に世界中で協力し南アフリカを(文化、スポーツなどあらゆる分野での)ボイコット、経済制裁をしている時、日本は「名誉白人」であることを誇りにした.世界とは協力せずに自分たちを「名誉白人」にした南アフリカと仲良くした.再三の国連からの勧告も無視したので、とうとう国連は協力しない日本に対して経済制裁を施行するということを可決した.この結果表向きだけ、国連の決議に従い、南アフリカへの制裁を始めた.要するに最後の最後まで国際世論を無視した.最近起ったことは、温室ガスに関しても同様に最後までフロンガスなどを廃止しなかったのは日本だ.このように日本国内と日本の外では、全く情報が違っている.国内にいるといかにも「日本」は世界の一員として「みなと仲良く」しているように思うが、実は世界では国としては利己主義を最後の最後まで貫いている.多分戦前もそうだし現在でも同じだ.

その世界の動向からはずれている日本をどうするかは、日本人が考えれば良いと思う.私自身はすでに絶望したから日本を脱出した.現在の欧州並みの民主主義や人を人として扱うことや自由思想は100年しても追いつかないことが解ったからだ.

ただ、原発事故では全世界に迷惑をかけている.海を放射能で汚染することは全世界の海を汚染していることだ.捕鯨やイルカ猟は、全世界が共有している野生生物に対しての残虐行為であり、種の絶滅を助長していることでもある.韓国とロシアが共同で日本の周辺の海の汚染を調査することになったのは、日本政府を全く信用していないからだ.日本がカネを振りかざし、世界中のマグロを買い占め、またはマグロを殺しているのは、世界中に迷惑が掛かっている.EUが地中海のマグロ漁をいくら制限しても、日本が巨額を出すのでマグロの密漁があとを立たない、これは世界中で言えることだが・・

南極海は世界の人々が共有して、その自然を守っている.なぜ日本はそこまで行って捕鯨をしなければいけないのか?伝統文化として継続していくつもりなら、日本が所有する海域だけでやってほしい.(それでも残虐行為に反対する人たちは沢山いると思うが.スペインの闘牛は国内だけで行なわれていたが、世界世論に押されほとんどの自治州で禁止条例ができている)太地町のイルカ猟は「ザ・コーブ」という日本では右翼の妨害で上映できない映画が世界各地で沢山の賞を受賞した(受賞の数でギネス世界記録に登録されるとか)お陰で表面化し世界中に知られるようになった.イルカ肉を食することが「昔からの伝統」であるとし、水銀に汚染されたイルカ肉を食べ続けることが、良い国民なのか?今ある「放射能汚染の野菜を食べて」福島を助けることが、良い国民なのか?岩手県太地町の10倍の数のイルカを殺しているし、静岡でも現在でもイルカ猟が続けられている.その伝統の食文化を残すとしている町のイルカから得る売り上げの8割は生きたイルカを世界中に販売することからだ.200年前に生きたイルカを外国へ売った伝統でもあるのだろうか?

どこまで昔に戻り、その時にやっていたことを「伝統」というのだろうか?世界で一番伝統を打ち消し、西洋に追いつけ追い越せとやった社会が今更「鯨肉やイルカ肉を食することは伝統文化だ」と言えるのだろうか?そう言う人々はなぜちょんまげを結っていないのか?そういう国の天皇はなぜ西洋の生活様式なのか?なぜ昔ながらの方法で昔ながらの機材を使い捕鯨やイルカ猟をしないのか?鉄の最新鋭の船で最先端をいくハイテク機材で野生の動物を殺すことがどんなに卑怯なことか、なぜだれも感じないのか?どこまで歴史をさかのぼり、その時に現在の日本とされる国の中にいた人々の子孫が「日本人」なのか?

世界は恐ろしいほどの早さで動いている.欧州は独自のEUを作り上げることに全力を上げているが、私には賛同できる方向だ.私がなぜ日本語でこんなブログを書き続けているか・・・自分でも疑問を持ち始めた.最初は日本の友人知人に「目を覚まして」という思いだったが・・・もう実はどうでも良くなっている.私は地球市民としてベルギーで生活し、仕事も始めた.この国(社会)が「何が起ろうが絶対に私を守ってくれる」という安心感は裏切られていない.なにかの宗教(例えばオーム)にはまり込んでいる人をそこから離れさすのはほとんど不可能であるのと同様に「日本を信じきっている人々」に日本政府は嘘つきで日本社会は尋常ではない、と言っても聞いてはもらえないし、それにどういう価値があるのか?オーム教を信じている人々が外の人たちに迷惑をかけたら、制裁という方法がある.国内ならそこの法律で罰することが出来る.日本政府が外へ行って悪いことをしたら、国際社会が制裁をする.それが戦争という形になるかボイコットになるか・・・ 現実には「日本製品ボイコット」は市民レベルでは全世界に広がっていることも日本人は知らなければいけない.

右上の写真は、昨年、私が乗っていたシーシェパードの船「ボブ・バーカー」で捕鯨船団の母船がチリ海域に入り、私たちがチリ政府にそれを知らせ、様々な証拠を送った.すぐにチリは海軍の船を出し、遺憾の意を表明.日本政府に対しても警告した.その時に母船日新丸がすぐにUターンをしたレーダーの証拠.もし日新丸がチリの警告を聞かなかったら、船は没収、乗組員は全員逮捕、そして国際的な政治問題に発展したはずだ.今年は捕鯨シーズンが始まったが、日新丸の重油南極海域では今シーズンから禁止になっている.その海域に行くだけで違法だ.ということも知りながら強行することは、何を意味するのだろうか?

先日やっと日本の18の市民団体やNGOが共同で捕鯨を見直すよう野田首相と声明文を出したが、日本のマスメディアは取り上げない.

以下12月1日付けの声明文(プレスリリース):
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/pr20111201/

南極海における調査捕鯨の抜本的見直しを

内閣総理大臣 野田 佳彦 殿
農林水産大臣 鹿野 道彦 殿
まもなく、クジラ捕獲調査(調査捕鯨)のために、日本鯨類研究所の調査捕鯨船団が南極海に向けて出航する予定とみられます。今年の南極海における調査捕鯨開始にあたり、私たち日本のNGOは、以下のことを日本政府に求めます。
1. 南極海におけるクジラ捕獲調査(調査捕鯨)の抜本的見直し
2. 事業への来年以降の補助金投入の廃止
3. 第 3 次補正予算において「鯨類捕獲調査安定化推進対策」として日本鯨類研究所へ追加投入されることとなった 22 億 8400 万円もの補助金の詳細な支出用途と支払先の公表
日本の調査捕鯨は、その科学的な根拠や合意形成の不十分さ、国際法で決められたサンクチュアリ内での捕鯨に対する批判があり、去る 7 月に答申された調査捕鯨に関する検討委員会の中間報告の中でも、縮小/停止という少数意見が書き込まれています。
また、近年は、鯨肉の国内需要の減少により、鯨肉在庫の増加が顕著となっています。そのため、2011 年 2 月には調査捕鯨船団が、その経営悪化から事業費推定 30 億円のうち 19 億円もの負債を抱えていることも明らかになりました。
さらに、国内の元商業捕鯨企業が南極海での商業捕鯨再開を行わないと宣言していることからも、日本政府が事業の目的として掲げている「商業捕鯨の再開」は誰の目にも非現実的であることは明らかです。
このような事業に貴重な税金を使うのではなく、未来世代のためにも沿岸地域の再生、被災者の支援等、今、本当に支援が必要なところに向けて下さること、さらには、国際的に定められた南極海サンクチュアリの精神をまもり、海洋国家としての責任を果たせるよう、調査捕鯨事業の抜本的見直しを心からお願い申し上げます。
以上<賛同団体 18 団体 2011 年 12 月 1 日現在>
あしたへの選択/Choices for Tomorrow (CFT)
アジアの浅瀬と干潟を守る会
IFAW(国際動物福祉基金)日本事務所
イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク(IKAN)
海の生き物を守る会
オルカラボ・サポート・ソサエティ(OSS)
化学物質問題市民研究会
京都水族館(仮称)と梅小路公園の未来を考える会
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
シャチ・ドット・ジェイピー(shachi.jp)
ジュゴン保護キャンペーンセンター
NPO法人 地球生物会議(ALIVE)
ツキノワの会〜人と野生動物との共存を考える〜
NPO法人 トラ・ゾウ保護基金
日本環境法律家連盟(JELF)
NPO法人 日本消費者連盟
バイオダイバーシティ・インフォーメーション・ボックス
NPO法人 ラムサール・ネットワーク日本
<賛同個人>
草刈秀則(野生動物保護学会会員)
佐久間淳子(自然の権利基金/ジャーナリスト)
富山洋子(NPO法人 日本消費者連盟
羽後静子(UNBD市民ネット共同代表)
星川 淳(作家・翻訳家、一般社団法人act beyond trust事務局長)
村瀬俊幸(UNBD市民ネット事務局)