もし、日本のメディアが「ジャーナリズムの精神」に則り、国民のために真実を追求し、知らせていたら原発事故の被害も今より減らせたのではないだろうか?

Noro153+EN2011-10-18


私は地震津波原発事故があった時期は、オーストラリアのタスマニアにいた.24時間被災地の情報をくまなく放映するテレビとネットで情報を収集した.間もなく国際的な原子力の専門家などが「緊急事態に対応する為の会」を開催、3月12日からは「メルトダウンした」というニュースやブログなどが次々にネットに登場した.その中には「人類史上最大の人的災害で、どうやってどこに1億2千万の人間を非難させるのだ・・」という記事も3月中に目にした.

タスマニアで知り合った日本人女性の実家が福島だと言うことを知って、「すぐに全家族をタスマニアに避難させたら?こういう時だから、長期滞在ビザもすぐに発行してくれるはず.」とアドバイスし、その女性は私の目の前で家族に電話した.相手はいたってノンキに「原発から数十キロも離れているし、ここまでは被害はないって近所中いってるから大丈夫・・」いくら日本の外では、メルトダウンが確認され日本中が危ないといっても、日本でのテレビや新聞が危険はないと言っているので、何を言っても無駄だということを理解した.

このビデオはドイツの4月1日に放送された風刺番組:

4月に入り、欧州に戻ってきてからも「どうせ相手にされないので、見守るしかない」という心境で数ヶ月経ってしまった.そして放射能汚染が広がり、東電や政府のウソなどが日本で発覚し始めた.被害が広がっていることで、大勢の人々が原発放射能汚染の実態を追求し、メディアや政府は信用できないと思い始めたことが、大惨事の中での唯一の救いかもしれない.

「日本のマスメディアも時々は本当の事や真実を書くから・・」という意見も沢山あるが、私には「百害あって一利なし」としか考えられない.外国語が堪能で世界中の情報を常にウォッチしているならば日本のマスメディアからの洗脳を避けられるはずなので問題はない.しかし、日本のマスメディアだけに頼っている人々は知らず知らずのうちに洗脳されてしまう.日本のマスメディアに洗脳されることの何がまずいかというと「真実や本当の世界の動向」は知らされず、日本(の権力)にとって都合の良いニュースや話だけ、または彼らに良いように曲げられたことしかしることが出来ないからだ.その結果自分たち、国民は世界の変化を知らず、泣くことになる.原発事故はその良い例だが、社会生活すべての分野で同じことが言える.某通信社の幹部から「お得意さんの悪口や一般の国民に不安を与えることは書けない」ことを知らされた.自分の媒体を持たない通信社にとってだれが「お得意さん」かというと「地方自治体や官僚」のようだ.普通の新聞社やテレビ・ラジオ局にとっては、スポンサーや広告を出してくれる企業になる.これでは民主国家どころか、法治国家であることも疑われる.

本当のことや真実を伝えることが問題になる以上に問題になることがある.それは、記者以外で大衆に影響を与える人々が、自由に発言できる環境とそのような人々の倫理観だ.そしてどれだけ沢山の時間が公共の電波に使用されたか.マスコミがやっていることは、ドラマやバラエティ番組や有名人を使い世論誘導すること.そういう中でどのように正しい判断が出来るだろうか?

1999年へ戻った当時、沢山の逆カルチャーショックに戸惑ったが、その一つに環境問題への理解度や解釈が日本の外とは全く違うことに気づいた.(もちろん全員ではないが、大多数の人々が・・)
・専門家を含め「地球温暖化」を信じない人たちが多い
・本当の意味での資源の節約をしようとする企業が非常に少ない
・ITを利用し、環境や温暖化対策を真剣に考えていない
・役所などの反デジタル化の意味が解らなかった
・環境の為の菜食を理解する人や推奨する人はほとんどいない
・人間の経済活動が地球環境を劣化させている事実は気がつかないか無視

環境問題を真剣に取り上げることは、今までの「経済の成長信仰」を見直さなければいけない.消費を減らしたり、食生活を見直したり・・・と沢山の今まで信じられてきたことを覆すことになる.日本の経済にとっては、とても不都合な真実と向き合わなければいけない.だから、日本のマスメディアは環境問題を取り上げないか湾曲させ、企業や権力に都合の良い方向へ世論を導いてきた.真実を追求したり、人々に本当のことを知らせないマスメディアは東電以上の犯罪者たちだ.

つい最近出くわした例をあげると、「肉食(畜産業)が環境汚染や温室効果ガス」の最大の原因である事実は、最近では当然ことと世界中の人々は知っているが、日本では全く浸透していないので、日本ではなじみの薄い「山羊肉を広める」ことにエネルギーを使い、それに賛同する人々が徐々に増えていること.世界の飢餓をなくし環境を守る為にはすべての肉食を減らす、または止めて菜食へ移行しなければいけないことは、40年前から欧米では盛んに言われてきた.(肉食に反対する意見は、環境問題、動物への虐待反対、健康志向など様々だが、ここでは「環境」だけを取り上げる.)

2006年にはとうとう国連食糧農業機関が「肉産業が世界最大の温室効果ガスの原因」になっていることを認め、世界中の人々に出来るだけ肉食を減らし、菜食になることが個人としてできる最大の環境保護になる」というリポートを発表した.日本ではいくつもの個人ブログでは取り上げていても、マスメディアがこれを取り上げたかどうかは不明.

ベルギーではゲントという20万人ほどの町が街を挙げて「週に一回菜食の日」としたのを始め、ベルギーではすでに20以上の町、世界では数えきれないほどの町が同様に菜食を推奨している.ゲントでは、その木曜日菜食の日は学校給食、役所、一般のレストランも菜食メニューを用意している.強制はしないが、環境問題への意識を高めることが理由だ.

先に書いた「山羊肉を広める」ことは、本がデジタル化し、近い将来はほぼ100%の本がデジタルへ移行するであろうとだれでもが予想できる時に「紙の本だけの出版社や本屋」を新規に始めることに似ている(もちろんそれよりずっと地球環境に悪い)時代錯誤も甚だしいことだ.世界の動向を知らないと損をするし、全財産を失うまたは健康や命さえ失う可能性がある.欧州ではテレビやラジオに出る有名人たちが気軽に環境の話をしたり、お笑い番組などでも環境問題やその他の国内、国外問わず世界の動向を浸透させている.そして誰にも媚びることのない真っ当な討論をテレビでみることが出来る.だから、例えば大勢の肉を食べる人々は「肉はいけないのは解っているけど、ごめんね」とか「大部減らしているけど」という心境、そして何百年の伝統より地球環境が重要であることを認識している.

畜産業(肉食)が環境に悪い理由は:ポールマッカートニーと英国菜食協会が作ったビデオ

・畜産業は、人為的に生じる(二酸化炭素の23倍強力である)メタンガスの37%を占め、この放出源の多くは、反芻動物の消化器系からもたらされており、その64%が酸性雨に大きく貢献するアンモニアが放出されてる
・家畜動物達の放牧を行うために地球の全地表の30%を使用し、家畜動物達を太らせるために必要な穀物の生産に、必要な耕作地の33%を使用している.森林が新たな牧草地のために削られると、深刻な森林破壊を招く事になる.実際に、かつてアマゾンに存在していた熱帯雨林の70%が既に家畜動物達の牧草地のために伐採され、それは現在でも進行している.
・大規模な過放牧や家畜の群れによる重量の集中や浸食によって牧草地の20%が不毛の地となり、土壌の劣化を引き起こしている.この統計は、不適切な畜産動物達の管理が砂漠化の促進に貢献し乾燥地では、より高いものになる.
・畜産業は、水質汚染富栄養化珊瑚礁の退廃に貢献しながら、減少の一途を辿る地球の水源に最も被害を与えている産業だ.このような主要な汚染源は、家畜動物達の糞便、抗生物質、ホルモン、なめし革工場からの化学薬品、家畜動物達を太らせるための穀物の栽培に使用されている農薬だ.大規模な過放牧は、地下水源の水循環に悪影響を及ぼしている.大量の水が家畜動物達を太らせるための穀物の生産のために使い果たされようとしている.
・畜産業は、南シナ海のリンや窒素などの主要な汚染源であり、海洋生態系での生物多様性損失に貢献している.
・肉や牛乳のために育てられている動物達は、現在、地球上に存在する生物の20%を占めています。土壌を乱用し、絶え間のない穀物の生産への需要を求める畜産業の存在は、生物多様性損失にも貢献しています。24ある重要な生態系の内15の重要な生態系が衰退の一途を辿っており、畜産業が、この問題の発端であるという事が明らかになっている.
・家畜部門からの温室効果ガスの排出量は、人間活動で排出される温室効果ガスの18%(2009年に51%と修正された)を占め、自動車や飛行機、その他のあらゆる輸送手段から排出されるすべてを合せた量よりも多い

  33%=家畜の飼料生産に使われる農地の割合
  37%=人間が排出するメタンのうち家畜産業から出る割合
  37%=人間が使う殺虫剤のうち家畜生産で使われる割合
  50%=人間が使う抗生物質のうち家畜生産で使われる割合
  65%=人間の活動で排出される窒素酸化物のうち畜産業から出る割合
  70%=世界の農地のうち家畜生産に使われる割合
  70%=世界の森林伐採地のうち家畜生産に使われている割合

別の人のブログから:(すみません、リンクが不明に)
「牛肉1kgを生産すること=車で250km運転して出るCO2=20日間100ワットの電気つけっぱなし。
ジープを運転する菜食主義者のほうが自転車をこぐ肉を好きな人よりも環境にやさしい。
ハンバーガーを1つ食べるたら台所の大きさの熱帯雨林失われる。
世界中使っているエネルギーの70%は家畜のエサを輸送するために使われる。
74%の大豆と33%の作物が動物のエサになっている。
今世界の人口の10億人の人たちが飢餓に苦しんでいる。もし家畜がいなかったら家畜が消費する世界全生産の74%の大豆と33%の作物は20億人の人たちを救える.
牛肉450グラムを生産するのに水2万リットルを消費する.
世界中11億人の人たちがきれいな飲み水を飲めない.
人間が使う水の70%は動物を飼育するために使われている.
アメリカ人が週に1日菜食になれば3780億リットルの水が節約でき、8億キロの食糧も守られる。
カナダとメキシコの車が使用する1日の燃料とおなじ2億6千万の燃料と1200万トンのCO2の排出を減らすことができる.」

国連環境計画地球水アセスメント 水効率の悪い灌漑農業を止め、肉消費も減らせ
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/conservation/news/06032401.htm

肉摂取を減らせば生物多様性・人間の健康・持続可能な農業に便益ーオランダの研究
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/food/06042801.htm

すべての動物性食品は百害あって一利なし---菜食の勧め
http://saisyoku.com/

最後に、肉食の伝統しかない欧州(ベルギー)では、「工業化された畜産業が環境に悪影響を与えているが、昔からある小さな牧畜は許されて良いのでは?」という意見もあるし、庭で自分で飼っている数羽のニワトリの玉子を食べることが問題ではない.
私の提案は、世界で何が起っているのかを知ること、がまずは重要なこと.そして後は個人の判断で「良心の消費」をする.(日本にまともな”ジャーナリズム”やマスメディアを作ることが先決だが・・・それに原発事故に関しては、オランダのハーグにある「国際刑事裁判所」に日本政府を訴えることもできる)